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今後の NVMe 採用の促進要因

2020 年代を迎えて、エンタプライズおよびクラウドインフラ内の NVMe の将来が、多く話題に上っています。NVMe over Fabrics の話題から、新しいフォームファクタや、さらには PCIe 5.0 まで、今年は非常に多くのイノベーションが起きる見込みです。

新しい発明、新製品のリリース、斬新な実装アプローチなどが注目を浴びていますが、NVMe の採用はまだ始まったばかりです。アナリストやジャーナリストが期待するよりも展開は遅れていますが、今年度は NVMe の採用が進む要因について、7つの予測を概説します。

1. 依然として最重要課題は効率

大部分のデータセンタ責任者は、コンピューティングを重視しています。NVMe によってさらに運用効率を改善できるため、多くのデータセンタで切り替えが進むでしょう。可用性の高いコンピューティングリソースを所持し、転送を高速化すれば、データセンタは低額でさらに多くの処理が可能になることも、移行の魅力を高めます。

2. 市販ソリューションが増えることで採用が増加

データセンタはそれぞれ異なります。ハイパースケーラ企業は、カスタムコンポーネント作成に多額の予算を持ち、市販コンポーネントに頼らなくても最適または最速の製品を所持できます。多くのメーカーが手頃な価格で NVMe ストレージソリューションを発売し始めているため、Tier 1 と Tier 2 プロバイダでは移行が進むでしょう。市販製品が利用可能なため、多くの市場検証およびテストが行われ、すでにその価値が証明されています。

3. RAID 手法は変化する見込み

サーバーラックと、その間を漂う2進数と、明るく反射する背景

理論上は、NVMe を実装することで、ストレージデバイスがハードウェアコントローラから開放され、SATA や SAS をはるかに超えるパフォーマンスが実現します。しかしアーキテクチャがハードウェアベースの RAID コントローラと冗長性に依存していた場合、NVMe 実装によって新たに複雑な問題が発生します。ハードウェアベース RAID コントローラのメーカーは、NVMe の普及に備えて、既存の U.2 サーバーバックプレーンに接続するソリューションを提供することで、ハードウェアベースの NVMe RAID ソリューションをサポートする必要があるでしょう。NVMe をサポートする RAID カードが既にいくつか販売されていますが、市場は立ち上がり始めたばかりです。ハードウェアベースの RAID は初期の開発段階にあります。そのため、企業が NVMe に切り替えてアーキテクチャ設計の決定する際には、高可用性要件を今後も維持する方法を検討する必要があります。その方法として、vSAN、Ceph、Linux ソフトウェアベースの RAID、LVM ミラーリングなどのソフトウェア HCI ソリューションと、SQL always-on、Oracle ASM ミラーリングなどのアプリケーションベースの高可用性レプリケーションのどちらを活用するかを決定します。ハードウェアベースの RAID コントローラが保護できる障害は1箇所に限定されるため、ソフトウェアベースの設計を同時に併用するべきだ、との考えもあります。

4. NVMe over Fabrics が重要性を増す見込み

ビルの間の道路を光の道が走る抽象的なイメージで、データ経路を表現

NVMe over Fabrics(NVMe-oF)によって、専用ネットワーク(FC/RDMA/TCP)経由で NVMe デバイスへの共有アクセスが可能になり、クライアントサーバーに接続するローカルデバイスのように、ネットワークでつながったデバイスにアクセスできるようになります。NVMe の集中ストレージ管理の利点には、管理の簡素化、容量の有効活用、容易な単一障害点の排除などがあります。NVMe-oF 仕様ではファイバーチャネル、RDMA または TCP ファブリックが要求されます。ファイバーチャネルプロトコル(FCP)は1990 年代中盤以降、主要なエンタプライズストレージ転送技術で、ファイバーチャネルネットワーク経由の SCSI パケット転送に使用されてきました。そのため、NVM Express において新しい「FC-NVMe」プロトコルを定義し、ファイバーチャネル上で SCSI と NVMe トラフィックを可能にすることで、既存の FCP ユーザーを FC-NVMe にアップグレード可能にすることが非常に重要となります。また、RDMA(リモート直接メモリアクセス)はもうひとつの主流のプロトコルで、InfiniBand、RoCE(集約イーサネットでの RDMA)、および iWARP ファブリックで長年使用されてきたため、NVM Express でこれらの既存転送技術を活用するために、RDMA 上での構築が採用されました。TCP/IP は強固な設計原則を持ち、70 年代後半からずっと、もっとも主流なネットワーク伝送プロトコルとなっています。当然 NVM Express では、展開コストを低減しセットアップ時間を短縮するため、既存の TCP ネットワーク経由で NVMe コマンドを伝送する手法を開発しました。

NVMe-oF が出現したことで、SCSI デバイスに存在していたボトルネックが、ネットワークコントローラおよびインターフェイスにまでスタックを移動させたため、IT インフラに多くの課題が発生しました。そのため多くの企業がイノベーションを起こし、より速いネットワーク速度と調整の自由度が高い QoS をサポートするスイッチと NIC を提供しています。オールフラッシュアレイのメーカーはまた、QoS を向上させ近辺のノイズを削除する一連のツールを使用して、エンドツーエンドの NVMe-oF 実装を新たに提供し、状況を一新しました。

5. ソフトウェア定義の顧客が後押し

クラウドの顧客は、読み書きの高速性以上のものを求めるようになっています。現在は、エンドユーザーに提供するコンピューティング集約型サービスを最大化させる方法に注目が集まっています。クラウドベースのトランスコーディングから大規模なゲームアプリケーションまで、NVMe によってパフォーマンスのレベルアップが可能です。また、プロバイダは、パフォーマンスの利点に基づいた価格モデルを提示して、初期インフラ費用の投資が適正であることを説明できるようになります。VMware vSAN や Ceph などの既存のソフトウェア定義ソリューションでは、拡張性が高く低コストのストレージ実装を使用してユーザーがコンピューティングインフラを最大化できるように、NVMe デバイスのサポートや、クラスタノード間の NVMe トラフィックの伝送など、大規模な開発が進んでいます。

6. フォームファクタが重要性を増す見込み

NVMe を普及させる要素に、ホットスワップ機能も挙げられます。一部のメーカーは、新しいフォームファクタ(U.2、M.2、EDSFF、E1.S など)を発表していますが、これらはデータセンタにおいて大規模なハードウェアオーバーホールを実施する必要があります。既存ポートがない場合、通常は新しいバックプレーンとマザーボードのサポートが必要です。Gen4 が発売されましたが、Gen4 をサポートする CPU アーキテクチャがひとつしかないため、依然として接続には PCIe Gen3 が好まれています。U.2 フォームファクタは、慣れ親しんだ 2.5″フォームファクタを利用するため、もっともよく知られており、サーバーメーカーはかなり以前からフロントローディング式の U.2 シャーシを採用しています。フォームファクタ以外に、U.2 はホットスワップ可能なため、データセンタで広く普及しています。

7. 耐久性と予測可能なパフォーマンスは、速度とフィードよりも重要

現在、大半のメーカーのデータシートでは、ピーク IOPS と低いレイテンシの値が強調されていますが、パフォーマンスのピーク値より安定性を重視するデータセンタの管理者が増えています。一般的に、ピーク値は使用率と負荷が最大の場合の推定パフォーマンス値を示しますが、常にこの値に達することはほとんどありません。したがって、データセンタ責任者は、予測可能性と信頼性の向上を重視して投資し、信頼性が高く一貫して高いパフォーマンスを求めるようになっています。

今年は、特にクライアント側で、NVMe 製品が大幅に普及する年となるでしょう。NVMe は将来の主流ストレージとなる見込みですが、データセンタ責任者から見てすべての要素が整い、SATA および SAS ソリューションから完全移行できるようになるまでには、まだしばらくかかるでしょう。\

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