耐久性
フラッシュストレージデバイスに含まれるすべての NAND フラッシュメモリは、NAND フラッシュメモリセルのプログラムおよび消去 (P/E) サイクルが繰り返されるに従って、データビットの格納能力が低下し、これは NAND フラッシュがそれ以上はデータを格納できない状態になるまで続き、その時点でユーザーがアドレス指定可能なストレージプールから取り外し、その論理ブロックアドレス (LBA) を NAND フラッシュストレージアレイの新しい物理アドレスに移す必要があります。新しいストレージブロックは、SSD のオーバープロビジョニング (OP) ストレージの一部である 「スペアブロック」プールを使用して、不良の一つを置き換えます。
セルが継続的にプログラムまたは消去されると、BER も比例的に増加します。このため、SSD の予想寿命にわたって確実にデータを保存できるようセルの機能を管理するには、エンタープライズ SSD コントローラーで複雑な管理手法を組み合わせる必要があります。
所定の NAND フラッシュメモリの P/E の耐久性は、現在のリソグラフィー製造プロセスと、生産される NAND フラッシュのタイプによって大きく変化する可能性があります。
NAND フラッシュメモリのタイプ | QLC | TLC | MLC | SLC |
アーキテクチャ |
セルあたり 4 ビット |
3 ビット/セル |
2 ビット/セル |
1 ビット/セル |
容量 |
最高容量 |
より高い容量 |
大容量 |
最小容量 |
耐久性 (P/E) |
最低耐久性 |
より低い耐久性 |
中程度の耐久性 |
最高の耐久性 |
コスト |
$ |
$$ |
$$$ |
$$$$ |
NAND ビットエラーレート (BER)、近似値 |
10^4 |
10^4 |
10^7 |
10^9 |
エンタープライズ SSD は、デューティサイクルに関してもクライアント SSD とは異なります。エンタープライズクラスの SSD は、データセンターサーバーが週 24 時間にわたってデータにアクセスする必要がある一般的な環境で、大量の読み取りまたは書き込み操作に耐えられる必要があります。これを、通常 1 週間のうち 1 日 8 時間しかフル稼働しない、クライアントクラスの SSD と比較してください。
エンタープライズ SSD は 24 時間 365 日のデューティサイクルですが、クライアント SSD は 20/80 デューティサイクル (コンピュータ使用中の 20% の時間はアクティブ、80% はアイドルまたはスリープモード) です。
アプリケーションや SSD の書き込み耐久性を理解するのは複雑な場合があります。そのため、JEDEC 委員会は、SSD に含まれる NAND フラッシュが信頼性の低いストレージメディアになってドライブを廃棄する必要が出てくる前に、SSD に書き込める生のホスト データの量を示す目的で、テラバイト書き込み (TBW) 値を使用する耐久性測定指標も提案しました。
JEDEC が提案する JESD218A テスト方法と JESD219 エンタープライズクラスのワークロードを使用すれば、TBW を介して SSD メーカーの耐久性計算を解釈し、より簡単にわかりやすく耐久性を推定して、あらゆるデータセンターに適用できます。
JESD218 および JESD219 のドキュメントに記載されているように、さまざまなアプリケーションクラスのワークロードは、ホストによって送信された実際の書き込みよりも 1 桁高い、書き込み増幅率(WAF)の影響を受けることもあります。これにより、NAND フラッシュの管理不能な摩耗、時間の経過に伴う過度の書き込みによる NAND フラッシュ BER の増加、SSD 全体に無効なページが広く分散することによるパフォーマンスの低下、などの現象が発生しやすくなります。
TBW はエンタープライズクラスとクライアントクラスの SSD 間の議論において重要なトピックですが、TBW は NAND フラッシュレベルの耐久性予測モデルにすぎません。平均故障間隔 (MTBF) は、デバイスで使用されるコンポーネントの信頼性に基づくコンポーネントレベルの耐久性と信頼性の予測モデルとしてとらえる必要があります。エンタープライズクラスの SSD コンポーネントに期待される性能の1つに、SSD の寿命全体にわたって、すべての NAND フラッシュ メモリで、より長期間かつ徹底的な電圧管理があります。すべてのエンタープライズ SSD は、少なくとも 200 万時間の MTBF 定格でなければなりません。これは 230 年以上になります。Kingston は SSD の仕様を非常に保守的に設定しており、SSD の MTBF 仕様がさらに高いことも珍しくありません。エンタープライズ SSD であれば、200 万時間は最低要求を余裕で満足させられる点にご注意ください。
エンタープライズクラスの SSD で S.M.A.R.T. 監視およびレポートを実施すれば、現在の書き込み増幅 (WAF) 率と摩耗レベルに基づいて、故障が起こるまでのデバイスの寿命を簡単に予測できます。電源喪失、物理インターフェイスから発生するビット エラー、または摩耗の不均一な分布などの障害イベントに対する障害前予測警告も、多くの場合サポートされています。Kingston SSD マネージャーユーティリティは Kingston のウェブサイトからダウンロードでき、ドライブの状態を表示するために使用できます。
クライアントクラスの SSD には、標準使用時または障害発生後の SSD を監視するための最小限の S.M.A.R.T. 出力しか備わっていない場合があります。
アプリケーションクラスと SSD の容量に応じて、NAND フラッシュメモリの予備容量を増やして、オーバープロビジョニング (OP) スペア容量として割り当てることもできます。OP 容量は、ユーザーとオペレーティングシステムからのアクセスからは隠されています。より高い持続パフォーマンスのための一時的な書き込みバッファとして利用したり、SSD の耐用年数中に故障したフラッシュメモリセルの交換品として利用したりして、SSD の信頼性と耐久性を高めることができます (スペアブロックの数も増やします)。